建築確認をめぐる諸問題について

1.建築確認の民間開放とその弊害

平成10年の建築基準法の改正により、建築確認業務が民間に開放されました。その結果、建築主は、新たに建築確認業務に参入した指定確認検査機関も利用できるようになり、これに伴って、より早期に建築確認を得ることができるようになったことから、建築主の利便性は飛躍的に向上しました。

しかし、その一方で、指定確認検査機関の中には、顧客である建築主との関係から迅速性のみを重視し、建築基準関係規定への適合性を十分に検討しないまま建築確認処分を行うものも見受けられるようになりました。

そうした中で、平成17年11月に耐震偽装問題が発覚し、その際に指定確認検査機関の審査の問題性がクローズアップされるようになりました。


2.指定確認検査機関が置かれている現状

前記の耐震偽装問題やその際の指定確認検査機関に対する不信感をきっかけとして、計画建築物の周辺住民によって、指定確認検査機関の建築確認処分の取り消しを求める審査請求事件がしばしば提起されるようになりました。

もともと、建築主は、建築基準関係規定をきちんと理解しているわけではなく、そのような中で土地を有効活用しようと、できる限りボリュームのある建築物を建築しようと考えます。そのため、ときには、建築基準関係規定を曲解しているとしか考えられないような違法な建築計画の建築確認申請がなされ、これに対してそのまま建築確認処分がなされてしまうこともあります。

このような場合には、周辺住民から建築確認処分取消の審査請求が提起されると、もちろん建築確認処分は取り消されますし、場合によっては、このような処分を行った指定確認検査機関に対し、損害賠償を求める民事訴訟が提起されることも考えられます。

3.法律の専門家に相談することの重要性

指定確認検査機関がなした建築確認処分の取り消しの審査請求、若しくは、行政訴訟が提起された場合には、当該指定確認検査機関が、当該建築計画の建築基準関係規定への適合性を主張・立証しなくてはなりません。このような主張・立証活動を行うに当たっては、法律の専門家に相談することは必要不可欠ではないかと考えられます。

また、これにとどまらず、指定確認検査機関としては、審査請求や行政訴訟が提起された場合にも当該建築計画が違法な計画と判断されないよう、日ごろからこれに精通した法律の専門家に相談することは有益であると考えられます。

当事務所では、主として指定確認検査機関からの相談を多く取り扱っており、審査請求事件が提起された場合には弁明書などの作成に関する助言を、行政訴訟が提起された場合には訴訟代理人として訴訟活動を行うなどしております。