労働問題の総合的解決について

1.労働事件の様相

経営者側から見ると、昨今、よく話題となっている問題として、残業代の問題があります。労働時間の管理に関して、昔ながらの日本人的・オーナー経営者的な鷹揚な対応をなしてきたために、経営のことを心配してくれているとばかり思っていた従業員達から、突如、合計数千万円に昇る過去の時間外手当を請求され、会社存亡の危機に立たされる、というものです。

方や、労働者側から見ると、労務費削減のため、非正規雇用者の常態化や、会社からほとんど理由らしい理由もなく懲戒解雇されたが、懲戒解雇された身では転職すらままならず、悲壮な決意のもと、その撤回を求める気の毒な従業員もいます。

その他にも、労働問題には、給料の未払い、雇い止め、職場におけるセクハラ、パワハラ、労災事故等、その労働事件の内容は多岐にわたります。

職場は、人が人生の大部分を費やす場所であり、単に賃金を得るというだけではなく、自己実現の場でもあるといえます。そのため、一度紛争になると、関係者の色々な感情が噴き出します。その紛争の解決にあたっては、実質的な労使対等のもと、労働者の利益と、使用者の利益とを、どのように調和的に実現していくべきかが問われています。


2.リスクに対応する労務管理対策の必要性

裁判所に持ち込まれる全体の事件数は年々減少しているにもかかわらず、平成18年4月から労働審判制度が開始されたこともあってか、労働事件の事件数は近年増加しております。終身雇用制が崩れてきていること、権利意識が向上してきたことも、一因でしょう。また、近年、弁護士の数が飛躍的に増加し、以前に比べ、弁護士へのアクセスが容易になったために、労働事件が顕在化するようになったとも言えるのかもしれません。特に、時間外手当の請求については、顕在化が顕著であるように感じられます。

実は、労働事件については、紛争が生じた時点では手遅れであることがほとんどです。そのため、紛争が発生する前の予防が極めて重要です。近年件数が多い時間外手当の請求についても、適切な予防がなされていない場合、常識的に考えても、異常な金額が算出されてしまうことがあります。当事務所においては、常識的な結論になるように調整するように努力は致しますが、現在の法令、判例を適用すると、その異常な金額が、少なくとも形式的には正とされる場合があることは知っておかなければなりません。しかし、多くの会社ではこのようなリスクを放置しており、いわば時限爆弾を抱えた状態になっているといえます。

3.法律事務所の役割

法律事務所の役割というと、紛争が生じた後に、その対応をするというイメージが強いのですが、実は、労働事件については、前述のように、紛争が生じた時点では手遅れであることが多いため、就業規則等の整備などの事前の対策が重要なのです。

当事務所は、主に使用者側の立場で、多くの労働事件を担当し、また企業の労務対策案件を顧問事務所として扱ってきております。その経験から、労働事件に対するスタンスとして、紛争になった時の対応はもちろん、就業規則や労働条件の見直し提案など、事前の予防にも力を入れています。